出世するにつれ、ステークホルダー・マネジメントの機会やその範囲は必然的に広がっていきます。一方で、ビジネスプロジェクトの失敗例の5件に1件は、コミュニケーション不足が原因と言われます。そこで、コミュニケーションが効果的かどうかを見直すことが重要です。

コミュニケーションの取り方なんて誰でも知っていると思う人は多いでしょう。今日のビジネス界でいっさい他人とかかわらず完全に一人で仕事をしている人など存在しないからです。しかし、上級職になるにつれ、コミュニケーションの形は変化していきます。伝える情報が複雑化したり伝える相手の対象が広がったりする結果、高度なステークホルダー・マネジメントが求められるようになります。話し方、内容の難易度、伝える情報量などを柔軟に変化させながらも正確に伝える能力が必要になります。例えば、金融やIT分野のプロフェッショナルにとっては、複雑な技術問題を専門知識のない関係者に広く伝えることも、必要なステークホルダー・マネジメントのひとつです。

事実、ロバート・ハーフの2017年版給与ガイドの調査では、アジアのビジネスリーダーが人材採用に際して、高い専門スキルに加えて優れたコミュニケーション能力を望んでいることが明らかになりました。

これを踏まえ、効果的なコミュニケーションに求められる4つのステップを確認し、ステークホルダー・マネジメントの向上に役立ててください。

ステップ1:ステークホルダーを特定する

まず、主なステークホルダー(関係者)を明確に把握することが重要です。株主、金融機関、サプライヤー、顧客、そしてもちろん上級管理職が、リストにずらりと並ぶかもしれません。仕事によっては、政府機関や非営利団体がリストに含まれることもあるでしょう。

ステークホルダーを把握できたら、それぞれの視点に立って、共有する情報がどのように影響するかを考えましょう。どのような情報が重要かは、ステークホルダーによって異なる可能性があります。また、あなたのプロジェクトによって及ぼされる影響も、大きく異なってくることがあります。

伝える情報を相手の戦略的な背景や目的に結び付けることで、より関連性が高く個人的なコミュニケーションができるようになるため、何よりも効果的です。これはつまり、ステークホルダーを味方につけ、最大のサポーターになってもらうことを意味します。

ステップ2:適切な時に適切な形で伝える

現代のビジネス環境が抱える最大の問題として、コミュニケーション過多が挙げられます。朝一番に殺到する大量のメールや、プライベートな時間を邪魔する夜遅くの電話など、あなたにも経験があるでしょう。

効果的なステークホルダー・マネジメント法のひとつは、相手が希望する連絡のタイミングと方法を把握しておくことです。これはシンプルですが、見落としがちです。電話とメールではどちらが良いのか、いつ頃が望ましいのか、それらに応じた形でコンタクトを取るようにすれば、メッセージを肯定的に受け止めてもらえる確率が高まります。

方法は簡単です。相手に希望を尋ねるだけです。定期的にスケジュールされたミーティングを好む人もいれば、必要に応じて都度カジュアルに報告を受けることを好む人もいるでしょう。コミュニケーションで重要なのは、可能な範囲で相手の希望に合わせ、なおも自分のニーズを満たすことです。相手を尊重していることが伝われば、相手も同じように対応してくれるようになり、ステークホルダー・マネジメントは自然と円滑になっていきます。

ステップ3:時は金なり・・・シンプル・イズ・ベスト

上級管理職になればなるほど、メールやその他のコミュニケーションにかける時間は短くなります。このためコミュニケーションは短く、明確に、分かりやすくまとめることが重要です。そして、相手に関係する事柄だけに留めるようにしましょう。

コミュニケーションの受け手が自分と同じスキルレベルでないことが分かっている場合は、技術的な専門用語は避けることです。専門用語をちりばめるようなコミュニケーションの取り方は、自分には分かりやすくても、バックグラウンドの異なる人には理解しづらく、結果として不快感を与えてしまいます。

事細かに伝えなければならない場合は、メッセージの冒頭に要点を箇条書きでまとめるようにしましょう。そして末尾に、特定の人または全員から返信が必要かどうかを明記します。

ステップ4:ステークホルダー・マネジメントはカスタマイズが必須

上記のすべてを実行するには時間がかかります。一斉送信可能なものではなく、一人ひとりに宛ててカスタマイズしたメッセージを送るには、さらなる労力と、時には費用までもがかかります。

しかし、その対価として、より良いレスポンスや協力を得られる可能性が高まります。結局のところ、これが相手に合わせたステークホルダー・マネジメントの最大の目的です。

それに、ステークホルダーがきちんと検討したうえでフィードバックを送ってくれるようになるため、あなたのプロジェクトが成功に向けて大きく前進することでしょう。