カウンターオファーを提示する前に考慮すべき5つのポイント

著者 Robert Half on 2022 年 8 月 29 日

優秀な社員から退職の意向を伝えられたとき、カウンターオファー(引き留め交渉)を検討するケースもあるでしょう。

企業にとって、優秀な人材の流出は大きな損失です。後任者を新たに採用・育成しなければならないだけでなく、スキルの損失に伴う業務生産性の低下が生じてしまうため、それらを考えるとカウンターオファーは一見適切な手段と思えます。

しかしながら、カウンターオファーを提示して社員を引き留めることは、必ずしも最善策とは言い切れずリスクも伴います。

実際のところ、カウンターオファーの成功率はさほど高くはありません。むしろ、カウンターオファーを提示したために、周囲の社員にまで悪影響を及ぼすこともあります。

カウンターオファーは上手く有効に使えば前向きな結果をもたらしますが、けして安易に進めるものではなく、慎重に使うべきであると考えます。そこで、本記事ではカウンターオファーを提示する前に念頭に置くべき5つのポイントを解説します。

カウンターオファーとは

そもそも、カウンターオファー(Counter Offer)とは、対案・反対の申込を意味する言葉です。交渉の中で、相手から提示された条件に満足しない場合に、新しい条件を提示し譲歩してもらうために代替案・申込みを行うことを意味します。

退職交渉においては、従業員が退職を願い出た際に、企業が退職を取りやめてもらうように従業員に対して給与・待遇などの条件交渉を行うことを言います。

実際に、ロバート・ハーフが企業の上級管理職を対象に行った調査によると、回答者の65%がカウンターオファーを提示した経験があると認めています。

カウンターオファーを提示する前に考慮すべき5つのポイント

退職の意向を持つ優秀な人材に対して、企業はなんとしても残ってもらいたいという想いから、カウンターオファーを行うことがありますが、安易なカウンターオファーは良い結果をもたらさないことも多いです。ここでは、カウンターオファーを提示する前に考慮すべき5つのポイントを解説します。

1. 長期的な解決策ではない

優秀な社員に長く勤めてほしい場合、水準以上の報酬、手厚い福利厚生、昇進・昇格の機会提供、さらに働きぶりを称賛することが必要です。社員本人が組織での仕事にやりがいを感じていれば、長期に渡って働き続けてくれます。

しかし、退職の意向を伝えられてから待遇の見直しを提示したところで、その効果はあまりに弱く、遅きに失する可能性が高いでしょう。退職の意志決定は昨日今日で決まるものではありません。不満や不安が募っている時点で、すでに社員の意識は転職に向き始めています。

仮に一旦はカウンターオファーを受諾したとしても、根本的な解決には至らず、転職活動を再開することも十分に考えられます。

2. 悪しき前例を作ってしまう

優秀な社員を引き留めるために、過剰なカウンターオファーを出したとなれば、その噂は瞬く間に社員の間で広まります。「退職の意向を伝えたら、給与を上げるから残ってくれと言われた。」このような事実が広まれば、給与が低いことに不満を感じている社員は同様に交渉してくるかもしれません。

また、交渉の手段として転職市場をチェックし始める社員も出てくるでしょう。その社員がどこかの企業から内定を得たとなれば、それを盾に強気の態度で交渉に臨んでくることも考えられます。

こうした前例は一度でも作ってしまうと、その後何年も組織内に残り続けます。安易なカウンターオファーは諸刃の剣ともいえます。

3. 他の社員の士気を著しく低下させる可能性がある

カウンターオファーを提示すれば、特定の社員だけに特別扱いをしていると捉えられ、正当性・公平性に欠けると感じる社員が現れる可能性があります。雇用主が手を尽くして引き留めようとする余り、他の社員が嫉妬したり反感を買ったりするかもしれません。

また、給与・待遇を上げるために、懸命に働いて会社の利益に貢献するよりも、退職をほのめかす方が効果的だと解釈する社員も出てくるでしょう。そうなってしまえば、いくら会社が「社員の頑張りを正当に評価する」と熱心に伝えたところで社員の心には響きません。

4. 信頼が失われる

必死のカウンターオファーによって、辞めずに残ってくれるとなれば安堵するかもしれません。しかし、その社員と再び信頼関係を築くことは残念ながら難しいでしょう。社員の中には「わだかまり」のようなものが残っており、一旦は落ち着いたように見えても、何かの拍子に再燃してしまうものだからです。

どんなに特別対応をしたところで、その社員がありがたく受け止める保証はありません。むしろ「お願いされたから残ってあげている」と優位に立つことも考えられます。その社員にとってすれば、退職するといってから報酬を上げるのではなく、もっと普段から評価してほしかったと考えていれば、カウンターオファーは特別対応どころか逆効果になります。

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5. パフォーマンスは向上しない

社員の給与を上げればパフォーマンスが向上するということを示唆するデータはほぼありません。短期的には上がるかもしれませんが、給与や待遇といった報酬によるモチベーションは長続きしないものです。

むしろ、カウンターオファーを提示されることで、「自分は会社にとって欠かせない人材なのだ」と自身を過剰評価し、それ以上に努力しようという意欲がなくなります。実際、自分の持つスキルと経験ゆえに代わりの利かない人材なのだと思い込む社員は、車のクルーズ・コントロールモード(一定速度の維持)のように、保守的でチャンレンジしなくなる可能性があります。

まとめ

今まで会社の利益に貢献してくれた社員が辞めようとしていると聞けば、カウンターオファーを提示する以外に選択の余地はないと感じるかもしれません。しかしカウンターオファーは短期的な引き留めには役立つかもしれませんが、いくつものリスクが伴います。

カウンターオファーを利用する場合は、正当性・公平性、周囲からの納得感を得られるようにきちんと説明するとともに、なぜ退職したいと考えているか、しっかりと話し合うことが大切です。

優れた人材をつなぎ止める手立ては、普段から自分が大切にされていると社員に感じさせることです。そのために、やりがいのある仕事を与え、適切な報酬で報い、キャリア形成をサポートすることが重要です。幸福度の高い社員の特徴はこちらからご覧いただけます。

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カウンターオファーは、社員を引き留める唯一の方法ではありません。人材の雇用維持と社員からの忠誠心を長期に亘って確保するには、日頃から社員が働き続けたいと思う環境を整備しておくことが何よりも重要です。


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