長引く人材不足に悩む日本では、企業の成長に必要な人材確保に向けてさまざまな対策が推奨されています。

対策のひとつとして、海外からの労働者の雇用が注目されており、現在130万人の非日本人が日本国内で雇用されています。

モルガンスタンレーMUFG証券でシニアアドバイザーを務めるロバート・アラン・フェルドマン氏によれば、日本では外国人労働者の雇用が加速度的に増えているとし、「2017年10月の基本調査では、日本国内における非日本人雇用者数が前年に比べて19万5千人増加しました。ちなみに前年の増加数は17万6千人、前々年は12万人と、増加の幅が拡大しており、労働者人口に占める非日本人の割合は現在2%です。」と指摘しています。

しかし、この流れを否定的にとらえている企業も存在します。日本人と外国人が一つ屋根の下でともに働くメリットとは一体どのようなものでしょうか?

コミュニケーション能力の向上

コミュニケーションの難しさを主な理由に非日本人の雇用に消極的な企業がある一方で、その他の数多くの企業では、実際には彼らが事業全体のコミュニケーション能力改善に役立っていると感じています。

「海外出身者が職場にいることで、従業員同士の会話が実質的に増えることに多くの人が気づきつつあります。新しいコミュニケーション方法を模索しなければなりませんから。」とフェルドマン氏は語ります。

しかも、従業員にとってはこれが言語スキルを向上させる機会にもなります。「最近は外国から来た人の日本語習得のスピードが割と早くなっていますし、彼らを雇うことは日本人従業員の英語スキルを上達させる良い機会にもなります。毎日英語でコミュニケーションを取る風潮は、企業にとっても大変好ましいことです。課題がメリットに変わります」と同氏は話します。

創造性が高まる

多様性に富んだ環境で働くことが、創造力を育み、チームが独自の問題解決方法を模索することにつながります。

「未経験の事柄に遭遇することがあらゆる人々にとって大きな刺激になります。見通しが立たないことに対する忍耐力がつき、異なる考え方や方法に寛容になります。」とフェルドマン氏は言います。

メットライフ生命保険の執行役専務兼CFO、最高財務責任者のニコラス・ウォルターズ氏はフェルドマン氏の言葉に同意し、「当社の事業では、単なるバイリンガルではなく、2国間の文化を深く理解する人材を求めています。事業的見地に立って日本と西洋、双方の考え方から物事を判断できる人、つまり、異なる発想、期待値、考え方に対する理解がある人が、事業に大きく貢献してくれるのです。」とコメントしています。

新規事業機会というメリット

海外市場での成長を計画に掲げる事業にとって、国際的なネットワークを持つ外国人の雇用は大きなメリットです。フェルドマン氏は「外国との新しいつながりがより多くのビジネスチャンスにつながります。」と解説します。

アイデンティティに対する新しい認識

フェルドマン氏によれば、非日本人の採用は事業にとって好ましいだけでなく、よりオープンで接続性の高い社会を築くことにも役立つと指摘します。

「他の国から来た人と一緒に働くことを通じて、出身が同じでも皆、同じアイデンティティを持っているわけではないことを理解するようになります。異なる国籍の人々と仕事をすると、私たち自身がそれぞれ『複数のアイデンティティを持つ人』になります。複数のアイデンティティが生まれると、人とのつながりを築きやすくなり、友人関係も作りやすくなります。このことは、平和を促進し、暴力を減らすために極めて重要であることがわかっています。」

では、非日本人従業員を雇用するにあたり、企業の成功に必要なこととは何でしょうか?

上層部のメッセージを伝える

従業員を率いるには、必ずリーダー達が手本を示さなくてはなりません。「上層部から従業員へは必ず、『海外からの労働者は、会社が望んで雇用しているという。彼らは仲間であり、同僚であり、私たちは1つのチームであること。彼らにはチームの一員として接すること』を伝えます。」とフェルドマン氏は説明します。

手本を示すこと

国内の従業員には、しっかりとキャリア成長の機会を与えましょう。そうすることで海外から来た従業員が上位職に就いた場合に不満を抱かずに済みます。

ウォルターズ氏は、日本人従業員との関係について次のように説明します。「昔ながらの『内と外』、すなわち『日本人社員 対 外国人社員』という感覚を改める必要があります。そして組織内のバランスを整えることが極めて重要です。国内チームに見本を示し、リーダー職を目指す日本人従業員の意欲が高まるよう、彼らの中から昇進する人材を選ぶことが非常に大切です。」

外国人労働者の雇用が人材不足の解消に

既存の従業員たちが「海外から来た彼らのおかげで自分たちの生産性が高まる」ことを理解できれば、彼らも新しい同僚を自然と受け入れられるはずです。「社内にこの仕事をやってくれる人がいればいいのに、と誰もが考えているポジションに人材を採用するのがコツです。そうすればどこの国から来たかなどは関係なしに、その人が来てくれることをありがたく思うものです」とフェルドマン氏は解説します。

明確な給与指標を定める

国籍に関わらず公平に給与を支払うことも重要です。」とフェルドマン氏は指摘します。「従業員は、自分の出身に左右されることなく働きに見合った給与が支払われていると実感できることが大切です。」と同氏は補足します。現在の給与指標を知るには、ロバート・ハーフの最新版の給与ガイドをご覧ください。多様性への道のりは一朝一夕にはいきません。しかし、少しずつ努力を重ねることが企業の大きなメリットにつながっていくでしょう。