市場価値を高めるための5つのヒント:労働市場の最新動向から紐解く

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昨今、日本では売り手市場が続いており、多くの企業が人材不足の課題に直面しています。このような課題を踏まえ、政府は、労働市場改革を発表しました。この労働改革は、労働市場にどのような影響をもたらすのか。変化し続ける労働市場で、市場価値を高めるためのヒントをご紹介します。

 


日本が直面する労働市場の課題

日本の労働市場は、少子高齢化社会が深刻化する中、数々の課題に直面しています。

まず、少子高齢化の影響によって日本の労働人口は減少しつづけており、人材獲得競争が激化していることがあげられます。総務省統計局の調査によれば、2021年の労働力人口の平均は6,860万人で,前年に比べ8万人の減少(2年連続の減少)となっています。さらに、内閣府の発表によると、このまま何の対策も講じられない場合、日本の人口は2060年には約8,700万人、2110年に約4,300万人まで減少すると予想されています(国立社会保障・人口問題研究所試算)。こういった状況を考えると、日本の人手不足は今後ますます深刻になると考えられます。

また、日本の労働者の低賃金も深刻な問題です。毎年、OECDが加盟諸国の年間平均賃金額を発表していますが、2022年の日本のランキングは38カ国中25位となっており、2021年より1ランク下がっています。日本の平均賃金はアメリカのほぼ半分であり、韓国と比較しても7,413ドルもの差が開いています(2021年は3,036ドルの差)。このように日本の賃金は低迷を続けており、高いスキルや能力を持つ優秀な人材は、より魅力的な条件を求めて他の企業もしくは海外へと流出してしまうことも多く、企業にとって優秀な人材を確保することは、ますます難しくなっているのです。

一方、このような日本の労働市場は、労働者にとっては、より競争力のある報酬を手に入れたり、自分にとって最適な職場や条件を選ぶことができる好機であるとも言えます。

 


労働市場改革とは?

日本政府は、上記にあげた労働市場の問題を解決するべく「三位一体労働市場改革」を発表しました。この労働市場改革は、諸外国との賃金格差の縮小や、同じ職務での公正な賃金体系の構築、性別・年齢による格差の解消、転職後の賃金減少防止などを目的としています。具体的な施策としては、以下のポイントが重要になっています。

 

1. リ・スキリングによる能力向上支援

DX(デジタルトランスフォーメーション)推進など社会の目まぐるしい変化に伴い、働き方や労働需要も変化しています。労働者は生涯を通じて主体的に新しいスキルを獲得する必要があると言えるでしょう。政府はこうした環境変化を踏まえ、新たに必要と思われるスキルを習得できるよう、個人と従業員のスキルアップを奨励する投資を行っています。また、企業側に対しても有効な支援策を検討しています。

 

2. 個々の企業の実態に応じた職務給の導入

日本においては、これまで終身雇用制度が主流でした。しかし、現代の労働市場では多様性や柔軟性が求められており、生涯に何度も転職することが当たり前の時代へとシフトしています。

このような状況の中、職務や勤務地などを限定せずに雇用する従来の「メンバーシップ型雇用」から、明確に定義した職務内容を遂行するスキルや実務経験を持つ人を採用する「ジョブ型雇用」へと採用方法も変化しつつあります。 政府は、「ジョブ型雇用」を実施するにあたり、個々の企業がその実態に合わせて職務給を導入し、日本企業と外国企業の間の賃金格差を縮小することを目指しています。

 

3. 成長分野への労働移動の円滑化

総務省の労働力調査によると、2022年の転職希望者数は968万人に達し、新型コロナウイルス感染症拡大前より約120万人増加しました。これは雇用の流動性が増していることを示しています。成長分野への労働移動を円滑にするため、政府は下記のような取り組みを進めています。

  • 失業給付制度の見直し
  • 退職所得課税制度等の見直し
  • 自己都合退職に対する障壁の除去
  • 求人・求職・キャリアアップに関する官民情報の共有化

 


市場価値を高める5つのヒント

労働市場改革は、労働者と企業の双方にとって新たな機会をもたらすものと期待されています。求職者は自己成長に努め、需要の高いスキルを身につけることで市場価値を高めることができます。ここでは、具体的な対策方法をいくつか紹介します。

 

1. 自身のスキル、強み、実績の棚卸し

自分の市場価値を把握するためには、自身のスキルや強みを棚卸しし、客観的に見つめなおすことは欠かせません。他の人とは異なる特殊なスキルや経験を組み合わせることができると、希少性が高まります。履歴書を定期的に更新し、自身の経験や実績を数字や具体的な成果物で示すことを習慣化すると良いでしょう。

 

2. 専門性を磨き続ける

変化の激しい時代において市場価値の高い人材となるためには、継続した自己投資が不可欠です。自身のスキルを磨き、専門性を高め続ける努力を行いましょう。需要の高い資格の取得や、関連講座を受講することで、スキルのアップデートを図ることが大切です。

 

3. 需要が高いスキルに注目する

市場価値を高めるためには、需要が高いスキルに注目することが重要です。デジタル分野、テクノロジー、英語力など、トレンドや産業の動向を把握しましょう。求人情報をチェックして、求められているスキルや資格を確認することも役立ちます。最新の給与ガイドなどを活用し、需要の高い職種やスキルについて調べてみましょう。

 

4. 人脈づくりの重要性

人脈作りは、労働市場において自分の価値を高めるために非常に重要です。Linkedinやセミナー・イベントへの参加、オンラインコミュニティでの活動などを通じて、業界の専門家など仲間とのつながりを広げましょう。

 

5. パーソナルブランディングの発信力

パーソナルブランディングを確立するために、SNSなどを活用して、積極的に自身について発信することも大切です。自身の専門性、自分が求めているものを明確にし、幅広いネットワークに発信することで、新しいチャンスをつかむきっかけになるでしょう。

 


まとめ

ビジネスにおいて自分の市場価値を高めるためには、専門性や需要の高いスキルを取得するだけでなく、人脈を活用して自己ブランディングを図ることが大切です。柔軟な学習姿勢と積極的な行動を持ちながら、自身の市場価値を高めるための努力を続けましょう。

現在の日本の労働市場は求職者にとって有利になっています。自分のキャリアパスや能力開発について、今一度、じっくりと考えてみましょう。転職によって自分の市場価値を積極的に高めるには、絶好のタイミングです。

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