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AIやデジタル化の進化に伴い、経理の将来性に対する懸念の声が一部で広がっています。しかし、財務・経理は企業活動に不可欠な存在であり、景気の変動や市場の変化にかかわらず、安定した需要があります。デジタル化により、仕分けの手入力や、経費精算などの作業は、自動化されていくことが考えられる一方で、AIの進化は経理職種において新たな需要も生み出しています。

そのため、経理職における転職を検討している求職者にとって、AIとデジタル化の進化はむしろチャンスと捉えるべきといえるでしょう。

本ブログでは、デジタル化やAI技術がさらに進化していく将来において、経理の分野で必要とされるスキルや今後需要が高まるポジションをご紹介します。

 


財務・経理に関する現状と今後の展望

まず、現在の財務・経理業務における動向をご紹介しながら、経理の今後の将来性を考察します。

 

FP&Aセクターの需要の高まり

市場競争の激化や経済の変動により、企業はより戦略的に意思決定を行う必要に迫られています。このため、財務データの分析や予測をもとに経営陣に対して意思決定のサポートを提供するFP&Aの需要が高まっています。また、デジタル化とAIの進化により、FP&A業務でもより高度な分析やシミュレーションを行うことが可能になっています。企業は、FP&A業務に必要となる会計知識に関連した資格やソフトスキルを持つ人材、会計学位を持つ人材を採用したり、OJTを実施してFP&A人材の育成に力を入れたりしています。

 

グローバル化による影響

国際的な企業文化に軸足を置き、バイリンガル人材に高い投資を行う日本企業が増えてきています。現在では、まだ一般的に日本企業にはFP&A機能がないため、外資系企業の仕組みを導入しています。また、会計基準についても、日本基準(JGAAP)から国際財務報告基準(IFRS)への移行する国内企業が増加しています。このような転換を背景に、昨今の国内企業は新しい発想と行動力を求めて、外資系企業からミッドキャリア人材を積極的に中途採用しています。

 

デジタル技術とAIによる自動化の加速

経理職種において、AIやデジタル技術の自動化は今後ますます多様な影響を与えると予想されています。以下にその主なポイントをまとめました。

ルーティンワークのデジタル化と自動化: クラウドベースによるAP(買掛金)のペーパーレス化など、会計業務においてもデジタル化が進んでいます。AIとデジタル技術によって、繰り返し作業やデータ入力などのルーティンワークは今後もますます自動化が進んでいます。これにより、人的ミスや作業時間の削減が実現します

データ処理と分析の効率化: 大量のデータを高速かつ正確に処理する能力を持つAI技術は、経理部門におけるデータ管理や分析業務を効率化します。

専門知識と戦略的な役割へのシフト: AIやデジタル技術による自動化によって、経理プロフェッショナルはルーティンワークから解放され、より高度な業務に集中することができるようになります。経理担当者は、これらの自動化プロセスで生成されたデータの解釈や戦略的な意思決定への貢献が求められ、経理職の役割は変化することが予想されます。

これらの動向は今後も続くことが予想されます。経理の担当者は、AIを最大限に活用しながら、自身の専門知識と技術力を磨いて変化に対応していく必要があるといえるでしょう。

 

財務・経理業界の最新トレンド

 


需要高まる財務・経理のポジション

デジタル化とAIの進化が、経理関連の職種においても新たな需要を生み出していることがわかりました。企業の戦略的な意思決定や効率的な業務遂行に貢献するポジションが注目を集めていますが、ここでは、これから需要が高まると予想される財務・経理の5つの職種ついてご紹介します。

 

1. アカウンタント

財務諸表の管理スキルを持つ優秀なアカウンタントの需要は、今後も高いことが予想されます。財務諸表を正確に管理することは、企業にとって極めて重要な業務です。また、最近ではコンプライアンスの観点などからも、企業財務が透明性を維持しているかどうかについて注視される傾向が高まっています。経営幹部は財務の健全性を速やかに理解する必要があり、企業がビジネス戦略を練り直す際にもアカウンタントによる専門的なサポートが必須です。

 

2. FP&A

市場競争の激化や経済の変動により、財務データを分析して戦略策定をサポートするFP&Aの需要がますます高くなっています。また、デジタル技術の進化によって、現在では大量のデータを高速に処理して予測分析を行うことが可能になりました。これらのツールを活用して将来のビジネスシナリオやリスクを予測し、意思決定の基盤となる情報を提供するFP&Aの役割は、今後も企業にとって不可欠といえるでしょう。

 

3. 経理マネージャー

デジタル化によって単純作業が自動化される中、高いリーダーシップスキルを持つ経験豊富な経理マネージャーの需要は今後も高まるでしょう。経営戦略との連携、予算と支出の入念な管理、規制とコンプライアンスへの対応、予算管理とコスト削減など、変化に積極的に対応しながらこれらの重要な業務に対応できる経理マネージャーの存在は、企業のビジネスの成長に欠かせません

 

4. 財務コントローラー

財務コントローラーの需要も今後ますます高まると予想されます。企業が透明性の高い正確な財務情報を維持するためには、新規スタッフの採用による増員や新規プロジェクトへの投資、社内の人員バランスの管理など、さまざまな対策が必要です。また、規制の厳格化によるコンプライアンス要件の増加や、データドリブン経営におけるデータ分析能力の必要性も高まっています。これらに対応しながら、財務コントローラーはリスク管理や経営陣との連携、戦略的な意思決定の支援など、さまざまな役割を果たす必要があります。

 

5. 英語力のあるシニアスタッフ、マネージャー

ビジネス市場のグローバル化、国際会計基準の採用、M&Aの増加、多国籍企業の進出などを背景に、英語によるビジネスコミュニケーションやプレゼンテーション能力を持つ経理の専門家への需要が高まっています。

 


まとめ

AI技術が進化する今後も、経理の分野の職は、十分に将来性があると言えます。デジタル化による経理業務の単純作業やルーティンワークの自動化は、今後ますます進化することが予想されます。一方で、これらのテクノロジーによって集められた膨大なデータを分析して戦略的な判断ができる人材や、デジタル技術に積極的に対応できるスキルの高い優秀な経理人材はこれからも多くの企業にとって必要となるでしょう。

需要が高いポジションに必要とされるスキル、知識、経験を身につけることで、自身をスキルアップさせ長期的なキャリアのゴールを描きましょう。

 

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