スキルの高い専門職の採用は世界中の企業が抱える課題であり、これは会計・ファイナンス職でも同じです。

調査によれば、世界的に事業を展開する企業のほぼ10社に9社(89%)がファイナンス部門における適切な人材確保が難しいと回答。この課題は、職場で従来のファイナンス・対人の両スキルが必須化しつつあることと、近年のデジタル化・自動化の動きを受けてさらに深刻さを増しています。

世界的な傾向としてファイナンス職の採用が最も困難な分野は以下のとおりです。

  • 経営・財務分析 - 36%
  • 財務管理 - 31%
  • 監査 - 28%
  • 会計 - 27%
  • コンプライアンス - 25%

こうした状況は、各国におおむね共通していますが、技能不足の面においては地域差も生まれています。ドイツ、フランス、ブラジル、大半のアジア太平洋地域では経営・財務分析がトップであり、ベネルクスおよびイギリスでは財務管理が最重要となっています。これは特に現在のデジタル化のスピードと文化的な優先度に影響を受けた結果です。

財務機能の自動化が加速度的に進むなか、ファイナンス部門のリーダーは今後、一部の技術力およびソフト面の技能が他と比べてより重要視されるようになると考えています。今後5年間に必要なファイナンス職向けのソフト面の技能開発は、リーダーシップ、コミュニケーション、商業的洞察力などが重要となるものの、これらは、財務ソフトウェア、会計・財務報告、規制・リスク管理能力などの技術的技能 の開発と共に行うことが不可欠です。

将来的な主要スキルの需要は、以下のとおりです。

  • 戦略ビジョン - 41%
  • 問題解決 - 40%
  • IT - 37%
  • データ分析力 - 36%
  • 商業/経営の洞察力 - 35%

しかし、先に述べたとおり国が違えば優先される能力の種類も異なります。ドイツ、ブラジル、オランダ、イギリスではITスキル、データ分析力といった技術面の知識が重宝される一方で、リーダーシップ、戦略的ビジョン、問題解決力などは、ベルギー、フランス、オーストリア、香港で最も重要視されています。

技能不足を埋め、変化する需要に応えるべく、企業では人材獲得戦への対応として代替となる選択肢を幅広く検討しています。

雇用維持と新規採用の観点から給与と従業員特典に着目する企業もあり、ファイナンスを担う既存従業員の給与は平均6.9%上昇すると予測されています。

その他、ボーナス支給の効果を探る企業もあります。褒賞と雇用維持に注目が集まり、今後12か月間でボーナスを受け取ると思われるファイナンス部門の専門職はおよそ4人に1人(23%)です。

金銭的な特典にも効果はありますが、従業員の幸福度とエンゲージメントを高めるにはさらなる工夫が必要なことも少なくありません。事実、世界を対象とした弊社の調査において、大半の労働者は仕事に正当な対価を得ていると感じている一方で、適正に評価されている、公平かつ尊厳のある扱いを受けている、仕事に対する達成感を得ていると感じることが、ファイナンス・会計部門の専門職が幸福度を高める主な要素だという結果が出ています。

もうひとつの興味深い事実は、技能不足を埋め、人材獲得戦に対処すべく多くの企業がファイナンス分野以外の専門職者を積極的に採用したいと考えている点です。これは調査したなかの84%から得た回答によります。従来型採用ルートからの移行に積極的になる理由には、ソフト面の重要性が上がっているという認識のあることが挙げられます。質問を受けた過半数(51%)のリーダーが一定の職務においてはソフト面が技術面より重要であると考えています。また39%という数多くの人々が、単なる昇給やボーナスの支給に比べ、ファイナンス分野以外の専門職者を採用するほうが技術不足の解決策にはより重要であると考えています。

どのような解決策であれ、ファイナンス職は、事業成長を阻む人材不足に基づいた対処をしなければなりません。事業は、組織を前進させ、従業員の可能性を伸ばすべく、採用、能力開発、人材育成の必要条件および求められる技能の変化に日々適応していくことが強く求められています。