働き方の多様化は数年前から特にIT業界の間で見られましたが、コロナ以降業界を問わず働き方の多様化が加速しました。国内では「働き方改革」が施行され、大企業を中心に多様な働き方を実現する動きが活発になっています。景気停滞や少子高齢化に伴う労働人口の減少の影響もあり、一人ひとりの生産性向上は今や企業の使命といえるでしょう。

しかし、働き方の多様化を実現することで「果たしてメリットがあるのか?」と疑問に感じる方も多いでしょう。本記事では、働き方が多様化している背景とそのメリットを7つ解説します。

働き方の多様化とは

世の中の価値観の変化やライフスタイル変化に伴い、働く人が置かれている状況や価値観も変化しつつあります。そこで政府は一人ひとりの事情に応じて自由に働き方を選択できる「働き方の多様化の実現」を掲げました。

企業には、女性・高齢者・外国人材・限定正社員など多様な人材を受け入れ、それぞれの事情を加味した受け入れ体制を整備することが求められています。

働き方の多様化が求められる背景

多様化が求められるようになった背景としては、従来の日本的雇用慣行に限界が生じてきたことが要因として挙げられます。長時間労働を前提とした働き方で心身を壊す人が増え、「過労死」が問題となりました。

さらに、同質性・年功を基準とした人事管理では個々の状況に応じた適切な評価ができないとされ、より個別管理の人事制度への移行が求められています。

とりわけ国内では少子高齢化が進み、ほとんどの業界で人材不足が深刻化しています。その上、日本の労働生産性は先進国の中でも低く、長時間労働を是正し一人ひとりの生産性を高めることが喫緊の課題です。

働き方の多様化に向けた取り組み例

働き方の多様化を実現するためには、具体的にどういった取り組みがあるのでしょうか。主な取り組み例として4つ紹介します。

テレワーク(リモートワーク)

テレワークは自宅や外出先など、オフィス以外で働く就業形態です。新型コロナウイルスの蔓延によって多くの企業が不要不急の外出を控えることを余儀なくされ、それによって在宅ワークが一気に普及しました。

フレックスタイム制度

フレックスタイム制度とは、コアタイム以外は始業時間・終業時間を自由に決められる働き方です。平日でも病院や役所に行けたり、通勤ラッシュを避けられたりといったメリットがあります。

副業制度

近年では、副業・複業を解禁する企業が増えています。従業員は副業をすることで、収入を増やせることはもちろん、副業で培ったノウハウを本業に活かすといったシナジー効果が期待されています。

週休3日制

1日8時間×週5日ではなく、1日10時間×週4日することで1週間の休みを1日増やすという制度です。これにより共働き夫婦が協力して育児をしたり、親の介護に時間を割いたりできるようになります。

企業が働き方の多様化を目指す7つのメリットとは

企業が働き方の多様化を実現することには数多くのメリットがあります。ここでは具体的なメリットを7つ解説します。

  1. コスト削減
  2. 生産性の向上
  3. 創造性の向上
  4. 企業イメージの向上
  5. 満足度の向上
  6. 社員の定着
  7. 人材採用

1. コスト削減

働き方の多様化によって在宅勤務者が増えれば、通勤交通費やオフィスの光熱費などの経費削減につながります。例えば、オフィスに出社したときだけ共用スペースを使用する「ホットデスキング」を導入することで、オフィスを拡張しなくても従業員数を増やすことが可能です。

書類や契約書もクラウドストレージを利用したり、電子契約を交わしたりすれば、紙書類の保管場所も不要になります。

2. 生産性の向上

多様な人材を受け入れることで生産性が向上します。例えば、営業職では今まで、営業先リストアップ、見込み客開拓、資料作成、商談、フォローアップなど、一人の担当者が行っていました。しかし人を増やすことで、見込み客獲得担当、商談担当、フォローアップ担当と段階ごとに分業体制を敷くことができます。

業務を細分化することで在宅でも出来る部分が生まれるため、結果として全体の効率化が図られ生産性が向上します。

3. 創造性の向上

様々なバックグランドを持つ多様な人材を受け入れることで、これまでと違ったアイデアや意見が生まれ、業務改善や新サービスの企画・立案に役立ちます。

従来のように、大量生産モデルであれば同質性が求められますが、世の中の変化が激しく何が起きるかわからない中では、同質性よりも多様性が重要です。働き方を多様化し、環境に変化を与えることで、型にはまらない革新的な考え方を促すことができます。

4. 企業イメージの向上

SNSの普及にともない、誰とでも瞬時に繋がれる時代です。Z世代をはじめとしたデジタルネイティブ世代にとって多様性は当たり前の価値観であり、それに対応しきれていない企業は魅力的に映らなくなる可能性があります。

老舗企業であっても、時代に合わせて価値観を見直すことができなければ、単に「古い会社」と捉えられかねません。

5. 満足度の向上

多様な働き方を認めることで社員の士気を高め、心身ともに健康な状態へと導くことができます。例えば在宅勤務は通勤による疲労感が少なく、休息時間を十分に確保できるため、過労や燃え尽き症候群、メンタルヘルスのリスクを軽減できます。

また様々な人材と関わることで、意見交換が活発になり社内の風通しがよくなります。余計な人間関係のいざこざに巻き込まれることなく仕事に全力投球できれば、自然と就業満足度が向上するでしょう。在宅勤務でチームの士気を高める方法はこちらをご覧ください。

6. 社員の定着

自由な働き方を認めることで、社員は会社から大切にされていると感じるでしょう。今の時代は介護や育児など、仕事以外でもやるべきことが数多くあります。

また結婚や育児のためにキャリアを諦めたくないという方も多く、企業は社員一人ひとりのキャリアを一緒に考え、都度適したポジションや業務を割り振ることが求められます。一人ひとりに合った働き方を提供することで、社員の定着率向上にもつながります。

7. 人材採用

日本型雇用の代表である「終身雇用制度」が大手企業でも崩壊しつつあります。生涯会社に居続ければ安泰という時代は終わり、一人ひとりが「働くとは何か」「生きるとは何か」について考えています。こうした背景から、現在の人材はスキルを高められる環境や柔軟に働ける環境を求めています。

一方企業にとってもこうした動きをチャンスと捉えるべきです。多様性を認めることで、今までであれば採用できなかった優秀な人材を獲得できるようになるからです。

まとめ|今こそ柔軟な勤務制度を提供すべき

多様な働き方を受け入れることは、社員に数多くのメリットをもたらします。一つのルールで縛るのではなく、一人ひとりの働きやすさを体現するための柔軟な勤務制度を導入することで、会社に多くの利益をももたらすことが期待されています。

一方、多様性を受け入れる際は、テレワーク環境やITツールの導入が必要ですし、マネージャーの負担が増加する懸念があります。さらにマネージャーは社員ごとに寄り添った対応が求められるため、今までと違ったマネジメント力が求められるでしょう。従業員のリモートーワークへの移行をサポートする方法はこちらをご覧ください。

ただし働き方の多様性なくして企業の成長はありません。時代に合わせて価値観をアップデートすることが重要です。


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