会社を辞める決断がキャリアアップに役立つことがあります。転職のタイミングや辞め方にはどのような戦略が必要でしょうか。

適切な転職のタイミングを模索している人は決して少なくないでしょう。いざ転職しようと思うと、罪悪感が芽生え、二の足を踏んでしまうものです。とはいえ、仕事が好きではない、サポートを満足に受けられない、感謝されない、やる気がしないと感じているのであれば、毎日オフィスに向かう気力など湧いてこないでしょう。それならば、今の会社を辞める決断を下すべきタイミングかもしれません。

その昔、人々は生き抜くために働き、人生は辛いものでした。しかし、現代社会では、そのような生き方は時代遅れです。目標を明確にし、自分が理想とする人生を生きるには、自分にふさわしい場所へと辿り着けるようキャリアの方向性を自分でコントロールする必要があると、多くの人が理解し始めています。目標なく巡航すれば道に迷うとよく言いますが、現代の職場ではこの格言がかつてないほど真実味を持つようになっています。

ギャロップの最近の調査報告書「State of the Global Workplace(世界の職場の現状)」によると、自分の仕事に没頭していると回答した人はわずか13%で、私たちの多くが仕事に「愛」を感じていないことが明らかになりました。しかし、その現状を甘んじて受け入れる必要はありません。では、どうすればよいのでしょうか? 今が転職のタイミングかもしれません。

会社を辞めるなんてとんでもない、と言う方もいるでしょう。しかし、あらゆる側面を考慮して、転職のタイミングを含む会社の辞め方を戦略立てて検討するのであれば、悪い考えではありません。実際、人生で最も賢明な選択となる可能性もあるのです。

「現職に留まって自分の才能に気付いてもらえる日を待ち続けるのではなく、今こそがより良い職場を探すタイミングなのです」と、リーダーシップ・パフォーマンスの専門家、ルイーズ・メトカーフ氏は説いています。

また、キャリア改革コーチとして知られるケリー・コザリス氏も同様のことを語っています。「2020年に向かって、一社における社員の平均勤続年数は3年程度となっています。ジェネレーションZの世代は、生涯の間に6つほどの経歴を持つようになるでしょう」。

会社を辞める決断は自分のキャリアにとって良いことか?

「会社を辞める決断をすることで、自分の好きなことができ、才能を開花させられるようになります」と、『The Corporate Dojo』の著者、カレン・ゲイトリー氏は述べています。「キャリアと情熱を合致させることが、職場で才能を発揮し、さらには人生を謳歌するうえで欠かせません。仕事からどれだけ活力を得られているのか、反対に英気を奪われているのかを考えてみてください。仕事が好きでなければ、日々の業務で自分の能力をフルに開花させ、手腕を発揮することなど到底不可能でしょう」。加えてゲイトリー氏は、自分の役割に満足していれば、仕事にさらに投資してスキルアップに励み、その結果、成功を収められる可能性が高まると説明しています。また、新しい会社で新しい仕事に就くことで、新たなチャンスを模索し、潜在能力を発揮できるようになり、自分でも気付かなかった可能性を広げられるようになります。

つまり、状況の改善に繋がるのであれば、会社を辞める決断はキャリアにとって良い判断となり得ます。特に会社がフラットな組織の場合はなおさらです。フラットな組織は、会社に留まって上位の役職に昇進したいと考える人にとっては難しい職場です。

上位の役職者がその地位に長く留まるため、ポストが空くのを何年も待つことになるケースも珍しくありません。そのような状況に陥っている人には、転職こそがキャリアアップへの正しいステップかもしれません。

転職を決断する前向きな理由には、他にも以下が挙げられます。

プロフェッショナルとしての能力開発

  • 収入増
  • 文化や組織との不和の解消
  • 仕事への満足感
  • キャリアの移行
  • 仕事の向上
  • 価値観との一致

後腐れなく会社を辞めるには

今の仕事に不満を抱いていても、冷静かつ計画的に辞めるタイミングを選ぶことが重要です。一般的に転職のタイミングは、尊厳を持って冷静かつプロフェッショナルに辞表を提出できる時が適切だと言われます。敬意を持って辞表を提出することで、円満に退職し、将来的にも仕事上の付き合いを維持できる可能性がはるかに高まります。何を聞かれるかを想定して、明確で冷静な答えを用意しておくことが重要です。相手も一人の人間だということを忘れてはなりません。いつかまた別の会社で一緒に働く可能性や推薦状を依頼する可能性も十分にあるのです。

また、感謝の言葉を忘れないようにしましょう。会社から学んだこと、得たことに対する謝意を、会話の中で必ず表すようにします。

「役職や職務によっては、できるだけ前もって会社に辞意を伝えるのが実務的です。後任の社員探しのサポートをすることも、会社を自分の味方に付けておくという点で大きな効果があるでしょう」と、IR Simplifiedの労使関係の専門家、キャメロン・ブルウェット氏は語っています。

仕事を変えるというのは、容易なことではありません。まったく新しい仕事を始めるのと多くの部分で似通っています。新たに人と出会い、一から関係を構築しなければなりませんし、新しいシステムについて学習し、新しい会社にも慣れなければなりません。現職にやりがいを感じられず、別の仕事に魅力を感じているようであれば、今が転職に最適のタイミングであると言えるでしょう。自分でキャリアをコントロールし、自分の意志で会社を辞める決断を下したら、後ろを振り返らないことです。