退職面談は、適切に実施すれば、辞める従業員から客観的なフィードバックを得るための優れた情報源となり得ます。

人材定着のための対策をどんなに講じても、どこかの時点で辞める従業員が出てくることは免れません。日本の厳しい競争環境においては、従業員が退職を選ぶ理由も多岐にわたります。キャリアの方向性の変化、ワークライフバランスの向上、あるいは収入アップや高い役職の可能性など、さまざまな理由で従業員が辞めていきます。

しかし、どんなケースであれ、従業員が退職願を出してきた場合は、会社として学ぶ機会に変えることができます。確かに、優れた人材を失うのは痛手です。中程度の人材に辞められることですら、仕事の流れが中断したり、さらなる人材採用コストを招いたりします。とはいえ、なぜ辞めることを従業員が選んだのかは知る価値があります。定着率を高めるためにその情報を利用できるでしょう。

退職の理由を把握するベストの方法は、正式な退職面談を行うことです。会社や人事ポリシーについての批判は耳が痛いものですが、良薬は口に苦しです。会社の短所がどこにあるかを知る機会です。キャリアの発展性がないからなのか、給与が他社に負けているのか、あるいは勤務時間や勤務場所に柔軟性がないからなのか、原因を把握するのに役立つでしょう。

退職面談は貴重な洞察を得る機会となる一方で、そのプロセスは適切に実践する必要があります。辞める従業員と話す際に注意すべき点を4つ紹介します。

プロフェッショナルに対応する
その従業員はもうすでに「元従業員」です。相手をとがめたり、トゲのあるようなことを言ったりしても、そこから得られるものは何もありません。感情は抜きにすることで、なぜ辞めることにしたのかについての率直な話し合いができるようになるでしょう。この退職面談で得られる情報は会社にとって非常に価値があることを覚えておいてください。ですから、プロフェッショナルに振る舞うことです。

簡潔に要点を押さえる
退職の理由のほか、どこがどう違っていれば勤続したかを尋ねます。辞める従業員が退職を決意した理由は、会社がコントロールできる要因ではなかったかもしれません。しかし、競合他社よりも給与が低いといった要因が出てくるのであれば、報酬ポリシーを見直すべき時かもしれません。

将来の可能性をゼロにしない
日本では、転職したもののすぐさま隣の芝生が青いわけではなかったと気付くことも珍しくありません。他の会社で少し働いた従業員が、結局は戻ってくる可能性を話し合うために連絡してくる場合があります。あるいは、あなたの会社に製品を仕入れている大口取引先や販売ネットワーク内のパートナーに転職していくこともあります。あなたのほうから縁を切らないかぎり、元従業員はあなたの会社にとって重要な味方になってくれることがあります。ですから、この退職面談という機会を利用して、あなたの会社と辞める従業員との繋がりをしっかり確保しておきましょう。

お互いの節度を要請する
プロフェッショナルに振る舞うことには、元従業員の悪口を言いたくなる気持ちを抑えることも含まれます。辞める従業員員を非難しないことを会社全体の文化にするとよいでしょう。そういう文化があれば、あなたや会社、さらには残った従業員について悪いことを言わないよう元従業員に要請しやすくなります。

結局のところ、建設的な批判に耳を傾けるのは必ずしも容易なことではありません。しかし退職面談は、辞める従業員の見方を知るチャンスです。辞める従業員は、残る従業員よりもオープンかつ率直に話してくれる可能性が高いでしょう。この種のフィードバックは、将来の従業員定着率を高めるうえで非常に重要な材料となり得ます。