上司には責任がついてまわります。部下に任せたプロジェクトが失敗した場合に大きな損失が生じても、部下の対応の不手際に顧客がお怒りだったとしても、責任を負うのは上司の役目です。こうした責任の重さから、部下に重要な仕事を任せなかったり、部下がやることに細かく口を出したりしていませんか?

しかし、本来上司がやるべき仕事は部下の行動を監視することではありません。優先順位の低い業務や決まりきったタスクにかかりきりでいると、いつまでも部下は育たず組織としての成長も見込めないでしょう。

上司がやるべき仕事は、部下の能力・適正に応じて仕事を任せ、組織が掲げる高い目標を達成することに他なりません。そこで今回は、部下に仕事を任せる際の効果的な方法を6つ紹介します。部下を信頼し仕事を任せることは、部下のモチベーションを高め、やりがいの向上にもつながりますので、ぜひ参考にしてください。

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部下に仕事を任せる6つの方法

部下に仕事を上手く任せられずに悩んでいる方は、ここで紹介する6つの方法を一つずつ試してみてください。

仕事として成果が出るには時間がかかりますが、やったことによって部下の反応がどう変わったかも含めて確認していくことをおすすめします。

1. 戦略的に業務を振り分ける

上司が部下に仕事を任せるのは、自分がやりたくない仕事を部下に押し付けることではありません。現在組織にはどのような仕事があり、それを誰に任せるのが適切なのか。といったことを熟慮した上で戦略的に任せる必要があります。

どの業務を任せて、担当者を誰にするかを決めるには、現在抱えている業務をリストアップし、次の3つのカテゴリーに分類します。

  1. 上司だけが対処できる業務
  2. 特定の部下が対処できる業務
  3. どの部下でも対処できる業務

部下に任せられる業務を整理できたら、その業務が完了するまでに必要な時間、能力、リソース(予算・情報など)について検討します。

その上で、各業務に必要な能力を備えた部下を検討します。業務によって必要とされる資質も異なるため、その点も考慮しましょう。

例えば、次のようなものが必要な資質として挙げられます。

  • 既成概念にとらわれない、革新的な思考力
  • 交渉を有利に進められる、対人コミュニケーション力
  • 多少の業務負荷もいとわない、ストレス耐性

これらの資質と、部下一人ひとりの強み・弱みを見極めたうえで、それぞれの業務に適した人材をアサインします。

特定の業務に誰が最適か迷うときは、同僚に意見を求めてみましょう。場合によっては経験や実績的に多少要件に満たなくても、本人の意欲・熱量に応じて思い切って任せてみることも大切です。

2. 特定の部下だけに任せない

複数名の部下がいる時は、特定の部下だけに仕事を任せるのではなく分散して任せるようにしましょう。部下が複数いるにもかかわらず、毎回同じ部下ばかりに仕事を任せることは不公平感や組織としてのひずみを生み出します。

部下によって能力が異なるため、仕事が出来る部下を優先して頼みたいと思うのは自然なことかもしれません。しかしながら、部下全員の能力を伸ばさなければ組織として継続的な成長は見込めないでしょう。

また、仕事ができる部下はすでにたくさんの業務を抱えているため、負担が増えることでモチベーションの低下に繋がりやすくなります。

3. 明確な指示を出す

業務を任せる担当者を決めたら、まずは課題とゴールを明確にします。これらを明確にすることは、最終的な成果にも大きく影響します。

どのような仕事であっても、解決すべき課題と目指す状態(ゴール)が存在します。そのゴールに向かって、具体的に何をどのように進めるのか正しく理解させる必要があります。

また、指示を出す際は、業務の優先順位と進捗報告の必要有無も伝えます。報告が必要な場合は、いつ・どのようにすべきかまで明確に伝えましょう。その際、口頭ではなくメールやチャットなど形に残すことで言った・言わない問題を防ぐことができます。

4. 管理は最小限に留める

部下が自分の思い通りに動かないと気が済まない、あるいは部下に何をすべきか指示し逐一進捗を確認する上司は「マイクロマネージャー」といわれます。

マイクロマネージャーが、部下に仕事を任せるときの最大の課題は、「仕事の細部まで管理したくなる衝動を抑えること」「部下を信頼すること」です。

管理を緩めることに最初は戸惑いを覚えるでしょう。しかし、マイクロマネージャーに管理されることで、部下は萎縮しパフォーマンスを発揮しにくくなりますし、上司は管理することで1日が終わってしまいます。

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5. 部下に権限を与える

組織として大きな成果を上げるためには、上司は一歩下がって業務を任せることが必要です。しかし、「それで部下がミスをしたら自分がすべて責任を取らなければならない」と感じる方もいるでしょう。その場合は業務執行の権限と一緒に責任も移譲することをおすすめします。

つまり、部下に仕事を任せるということは「業務や責任を部下に信頼して委ねる」ということです。責任権限の移譲によって信頼を示すことで、部下の問題解決能力、プロジェクト管理能力、意思決定能力を向上させることができます。

6. リスクを受け入れる

部下を信頼して仕事を任せることは、人によって大きなストレスに感じる方もいます。例えば、このようなことで頭がいっぱいになっていないでしょうか。

  • 自分が求めているやり方と違う
  • 任せた仕事の進捗がわからなくて不安
  • 部下がミスをしたら自分が責任を取ることになる
  • 周りからだめな上司だと思われたくない
  • 目標を達成出来なかったらどうしよう

信頼して任せるということは、失敗のリスクを受け入れるということです。こうしたリスクを受け入れなければ、チームの生産性を最大限まで引き上げることはできません。

はじめは不安もあると思いますが、リスクに慣れることが大切です。信頼して任せるからこそ、部下に対して感謝の気持ちが芽生えてきます。

まとめ

上司となった今でこそ部下を抱える身になっていますが、昔は自分も部下として働いていた時代があったはずです。その時に上司とのコミュニケーションにおいて嬉しかった瞬間を思い出してください。

おそらく細かく管理されたり、厳しく叱責されたりしたことよりも、未熟な自分を信じて仕事を任せてもらえたときではないでしょうか。もしくは自分なりのやり方で成果を出し、上司から褒められたときではないでしょうか。

もちろん、ミスやトラブルを起こし上司に迷惑をかけたり、叱責されたりした経験もあるでしょう。そのような経験から、「同じ失敗を部下にさせたくない」と感じるがあまり、つい厳しくしてしまっているのかもしれません。

しかし、部下が仕事にやりがいを持ち、「この上司のもとで働けてよかった」と感じるのは、やはり信じて任された時です。組織という中では、上司と部下という関係ですが、あくまでも組織上の役割であり、本来人間は平等です。

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部下に仕事を任せることは「良好な信頼関係を築くこと」に他なりません。上司からの厚い信頼のもと、部下は存分にスキルを伸ばせるようになり、上司はさらに組織にとって影響力のあるアプローチをとることができ、大きな利益をもたらすことに繋がるでしょう。


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